円蔵院の毎朝の読経は七時二十分からはじまります。かつてはより早い時間帯でしたが、ここ三年、近隣の小中学生たちの登校時間に合わせてお唱えをしています。
この朝の勤行(ごんぎょう)でお唱えするお経には「南無先師尊霊」をはじめ、当山の檀家信徒の先祖代々からの御霊に感謝しご供養する「南無当山檀越一切精霊」のほか、戦災や震災で亡くなった方の御霊をご供養する経文もふくまれます。朝の清らかな空気を吸い作務(掃除)をしたあとは、毎日三百六十五日、欠かさずご供養と勤行をしています。
おなじく、朝の参拝者のさまざまな願い事をうけての「南無各願成就如意満足」や世界中の生きとし生けるものの長寿と健やかな繁栄を祈り願う「南無法界万霊」などがあるのですが、その祈願のなかに「南無児童交通安全祈願」があります。
朝勤行の時間をずらして、この祈願文をとりいれたのは、新型コロナ禍がはじまってからです。以前は、勤行のあと、登校してゆく児童や生徒と出会うたび「おはようございます」「気をつけて、行ってらっしゃい」と元気よく挨拶を交わしていました。ところが、ご存知のように、コロナ以後は、マスクをした子どもたちと交わす朝の挨拶は、会釈と沈黙に変わってしまいました…。
そこで「おはようございます、行ってらっしゃい」のせめてもの代わりに、朝の挨拶と安全を願う気持ちを込めて、元気よくお唱えをしています。ささやかな行動ですが「朝はお経の声がするね」とすこしは安心感があるのか、登校中の子どもたちに好評のようです。
令和五年の一月には、三年ぶりに、芝川小学校の児童が円蔵院を来訪し見学する予定です。そのときは大きな声で「おはようございます」と、ひさしぶりに子どもたちと笑顔で挨拶を交わしたいと思います。